【外部脚本演出】「空中散歩とメンソール」あとがき(作品をご覧になった方向けの作家、演出家としての御礼をこめて)

写真

 

無事、コルバタ主催『空中散歩とメンソール』全日程終了致しました。

「おひとりさま演劇集団」という言語矛盾も甚だしい演劇活動をしている私にとって様々なものごととの出会いをもらえる外部(AmmoとMinami Produce以外)での演劇活動は本当に貴重なものなのですが、まさしく今回もそのような素晴らしい機会となりました。

 

 

少しだけ作品についてお話しをさせてください。今回はいわゆる「書き下ろし」作品です。もともと作品自体は某イベントに出演するためにプロット(いわゆる企画書=あらすじ状態)だけありまして、諸々の事情でそのイベントに出演することも、この作品が書かれることもなかったのですが、今回の舞台のために掘りおこし、色々と手を加えて『空中散歩とメンソール』という作品と相成りました。

今回は「普段僕の作品や小劇場のメインストリームに触れられなかった方がお客さんとして多いのではないか」という考え、とにかく小劇場という場所の楽しさや魅力に触れてもらおうと大小仕掛けを仕込んでいました。普段こういうことを書くのは「手品師が自分でネタバレするようなもの」であり、極力避けているのですが、今回はそういう味付けも楽しんでいただければと思い、この「あとがき」としました。

 

 

・登場人物の名前について

菊池、石川、柱谷、加藤と並んであれ?と感じた方もいらっしゃったかもしれません。僕は毎度名前の語呂合わせや元ネタが大好きでその種の遊び心をすぐ出すのですが、今回の登場人物は全て「ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)の黄金期の選手」の名前を拝借しています。というわけで、三浦はカズ選手で、武田は某遊び人タレント兼元日本代表ストライカーの武田修宏選手というわけですね。少し懐かしい話ですね。作者の年齢がバレますね。

 

・幕間のモノローグについて

幕間にそれぞれ中村、北沢、戸塚が「自分の話」をするシーンが挿入されています。多くのお客様が気づかれた通り、あれは僕が書いた台詞ではありません。
僕がそれぞれ「中村=大切な時間の話」「北沢=もう会えない人」「戸塚=一番大切な人」というお題を出して、稽古中に俳優が話してくれたものを録音し、「えー」や「うちー」とかの感嘆詞なども含め完全に台本に起こして、それを僕が添削し、「演出しなおした」ものです。彼らの語調や内因、ジェスチャーなどはほぼ僕が演出をつけたもので彼らの独自性はありません。
しかし、俳優一人一人が「これは自分の言葉である」という手触りを保持していて、それが脚本世界とはどこか違う手触りを観客の皆様にお届けできたのではないかと思っております。「普段ほとんど演劇を観ない」と言っていたお客様も「なんか不思議なシーン」と気づかれたようで‥。

 

・はないちもんめ

あれも、象徴的かつ印象的なシーンではないのでしょうか。もちろん実際に「はないちもんめ」をしていたわけではなく、日々教室の中で繰り広げられているそわそわ、そして共学ならではのお互いを値踏みしたり、あっけなく振られて次の異性を好きになるさまをなんとか象徴的に表現できないかと思い、ああいうシーンとなりました。実は男子はじゃんけんでは全勝しているのですが、カップルが成立しているのは北沢=戸塚だけというなんとも世知辛い結果となっています。

 

・「教室でヤっていた」件について

1幕2場、つまりオープニングシーンの次の場面で、三浦が「この教室でやっていたんだ」という台詞を吐いています。それを最終シーン。謝恩会の前で藤川が「あれ、なにか忘れてる気がする」とこたえており、この問題が未解決であることを示しています。
では誰が?という問題ですが、いくつか正解のパターンがあります。劇中でカップルとして成立しているのは北沢=武田、塚本=石川(あとははないちもんめで一時的には北沢=戸塚。三浦=武田は報告していたのが三浦だからない。ずっと後に痛い自己アピールとして三浦=武田もあるかなーと思いましたが、やはりないです)。そのどちらであったか、あるいは誰も知らない誰かであったかは本作中に答えが出されていません。
これは、正解を観てくださった皆さんが考えて、決めていただければと思っております。

 

 

他にも諸々あるのですが、今回はこれくらいでしょうか。少しでも作家の頭の中を覗いていただいて、楽しんでいただければ幸いです。

さて。末尾となりましたが、観に来てくださった皆様、気にかけてくださった皆様、勇敢な俳優各位、クレバーなスタッフ、関係者諸氏、そしてこのような機会を与えてくださったプロデューサのMARUさんに最大限の感謝を。

また、お会いしましょう。

皆様の中に少しでも塚本が生きていることを願って。

 南慎介