南が演出をさせていただきます。
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ある地方都市。川の流れる町。川は海へと続く……。
初秋の縁側。中庭に向かって佐伯洋次は爪を切っている。
そこへ洋次の妻直子が買い物籠を下げて帰宅する。
台所で食事の支度に取り掛かるが、ふと、公園のベンチに日傘を忘れたことに気づく。
洋次は直子のかわりに日傘を取りに出掛ける。
…………洋次と直子が暮らす縁側には、関わる人々が、訪れ、帰っていく。
未充足であるからこそ求め合い、ままならぬものを何とかしようと言葉を紡ぐ。
1996年 岸田國士戯曲賞受賞作。