【調和と服毒】イントロダクション

 

最も神聖な場所に悪魔のように美しい絵を描く

かつて、「神=美」時代があった。
その時代は遥か昔となったものの、いまだに多くの人を惹きつける「神」と「美」。

ましてやもっとも神聖な場所、ローマ・バチカン宮殿であれば言うまでもない。
バチカン宮殿の教皇の間を任されていたラファエロ・サンティの工房に置かれた、一枚の絵は多くの人々の心を揺れ動かしていた。

「悪魔のように美しい絵」。


これを認めても良いものか、これは美か?さらに驚くべきことに、
これを描いたのはラファエロではなく、工房に名を連ねていた名だたるマエストロでもなく末端に近い、一人の工房付きの男装の、女性画家であった。

ルネサンスの時代と芸術


ルネサンスの時代、欧州ですでに廃れていた古代ギリシアの文化がイスラームから逆輸入されると、人々の生きる力は「再生=ルネサンス」し、身の回りのものが華やかになっていきました。

当時の服装を衣装の 金田かお里(undaily gate)が、
舞台美術を 谷佳那香 が、 
緻密な取材をもとに、時に大胆なフィクションを入れながら、工房という庶民の場にも広がるルネサンスの息遣いを感じていただける舞台空間を創造します。

あらすじ

ルネサンスを代表する巨匠、古典主義の最大の画家、新プラトン主義の美術界における最大の守護者、ラファエロ・サンティは教皇の居室を装飾するという名誉ある仕事を承った。

しかしながら、広大な内装の全てをラファエロ一人で描くことは難しく、彼の弟子がその一部を請け負ってフレスコ画を描いていた。多くの名画が彼の忠実なる弟子によって描かれる中、3つ目の部屋、最も地味な場所に描かれた一人の弟子の作品が工房の中で大きな議論となっていた。

「美しすぎる」

後にラファエロの工房から独立する高名な弟子の一人が言った。「あれは美しい。しかし悪魔のように。この神聖なる場所にふさわしくない」
しかし、ラファエロは考える。

「もしこれが完成すれば、ダ・ヴィンチやミケランジェロを超えられるかもしれない」

『美しい』という言葉が神に近いという言葉とイコールであった時代。
神を超える作品を描こうとした一人の男装画家とルネサンスの最後の光について。