Ammo vol.1 Lucifer

脚本・演出:南慎介
2014年10月31日~11月3日
@日暮里d-倉庫

アフタートーク

10/31(金) 中村慎太郎氏(作家。著書「サポーターをめぐる冒険」にてサッカー本大賞2015を受賞)
11/1(土) 千田善氏(翻訳家、国際政治学者。イビツァ・オシム元サッカー日本代表監督通訳)

Lucifer:キリスト教の定める悪魔のひとつ。七つの大罪のうち、傲慢を司る。

誰もが彼のプレイに夢中だった。
シルクのように滑らかなボールタッチ、一度ボールを持ったら離さないドリブルは悪魔的でさえあった。
敵も、味方でさえも彼に魅了された。将来を嘱望された選手だった。
イリヤ・ペトロヴィッチ。彼は、ある日突然消えた。

ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の終結から十年後、私はトヨタカップで来日するシーナ・アクシシャヤを迎えに成田空港に車を走らせていた。
あの、”やせっぽちシーナ”が今や代表のエースだというのだから、時間はあまりにも早く、未来は全く予想がつかない。

私は、彼と話すべきことがあった。あの日の、イリヤ・ペトロヴィッチと、彼を鼓舞するビリヤシュのサポーターの声と、そして私を含むあらゆる人達の傲慢についてだ。

——「同じ歌を歌って応援しているとき、俺達は仲間だって思えるんです。将来への不安とか、そりゃ、ありますけど、ここに来てビリヤシュへの愛を叫んでいれば哀しいことも辛いことも全部吹き飛んでしまいます」

デヤン・ザデディッチの陳述

——さあ 行こうぜ 俺達のイリヤ ラララララ 俺とともに
さあ 行こうぜ 俺達のシーナ ラララララ 君のために

Luciferメインテーマ「イリヤとシーナ」

——イリヤ さあ行こうぜ 俺達を揺らせ
イリヤ さあ輝け 俺達の誇り

イリヤのチャント

セルビア人
イリヤサッカー選手荒川ユリエル(拘束ピエロ)
ソニアイリヤの姉平佐喜子(Ort-d.d)
スロボダンサッカーコーチ三浦佑介(サルとピストル)
ルナ右傾化していく大学生前園あかり
カタリナイリヤとソニアの身元引受人加藤素子
デヤン熱狂的なサポーターさいとう篤史
クロアチア人
ハナシーナの彼女石塚みづき(スターダムプロモーション)
アレン民族主義者安田徳
ミリツァ賭博を愛する不良シスター鹿島ゆきこ(アガリスクエンターテイメント)
ムスリム人
シーナサッカー選手吉永輪太郎(HUMANAMUH)
エディン民兵上がりのムスリム軍人斉藤太一
ダミールサポーターのリーダー大春ハルオ(ラチェットレンチ)
ヤスミラダミールの妻水津亜子
ファティマデザイナーに憧れる女井上千裕
マケドニア人
エスマピッツェリア・プラーヴァの女店主大野由加里
日本人
酒井カメラマン、フリーライター信國輝彦

脚本・演出:南慎介(Ammo) 
舞台監督:篠原絵美 舞台美術:照井旅詩 音響効果:ミ世六メノ道理 
照明:阿部将之(LICLKT-ER)
AP:山邊健介(レゴプラ) 演出助手:杉山幸
イラストレーション:桐村理恵
制作:吉水恭子(芝居屋風雷紡) デザイン/web管理:堀口節子
取材協力(敬称略):宇都宮徹壱、木村元彦、千田善、中村慎太郎 写真提供:宇都宮徹壱

 本州と四国を合わせた程度の面積しかない旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国は、その崩壊の過程と共に民族浄化、NATO空爆が吹き荒れたヨーロッパ最大の政治的危機に陥った国であった。「ヨーロッパの火薬庫」とも呼ばれ、昨日までの隣人同士が殺し合いを始めたショッキングなニュースは未だに記憶に新しい。
そしてまた、旧ユーゴスラビアの諸国は、キラ星のごときフットボーラーを生み出した、90年代「幻のサッカー王国」でもある。デヤン・サビチェビッチ、プレドラグ・ミヤトビッチ、ズボニミール・ボバン、ダボル・シュケル、そして何よりドラガン・ストイコビッチ。しかし、彼らの多くは自分のキャリアのピークを戦争で不本意に傷つけられています。

 彼らが順調にキャリアを伸ばすにつれ、戦争の影は濃く、彼らの足元にまで伸びて行きます。彼らの選択によって、同じクラブ、同じようなキャリアを歩んで来た選手達の未来は残酷にも枝分かれして行き、本来政治とは切り離されるべきスポーツの分野において、消えてしまった名もなき選手達がたくさんいます。

本作品は【日本人ジャーナリストから見た、郊外の街で育った人種の違う二人の少年フットボーラーの定点観測】です。

Lucifer…明けの明星を意味する堕天使の名前。キリスト教において、七つの大罪のうち、傲慢・高慢を象徴する。

ボスニア・ヘルツェゴビナ在日本大使館
宇都宮徹壱、木村元彦、千田善、中村慎太郎
拘束ピエロ、Ort-d.d、サルとピストル、アガリスクエンターテイメント、ヒューマナムー、 ラチェットレンチ、KATO企画、エビス大黒舎、スターダムプロモーション、希楽星、ECHOES、 LICHT-ER、レゴプラ、芝居屋風雷紡、CoRich!舞台芸術
阿部紗穂里、池田智哉