Space早稲田演劇フェスティバル2016出展作品
脚本・演出:南慎介
2016年11月23日~27日
@Space早稲田

男たちの戦い
『殉教者』
サイイド・クトゥブ。イスラム原理主義を作った男は、クラシック音楽とヴィクトル・ユゴーを溺愛し、ダブルのスーツを品良く着こなす俗な人物であった。彼自身を、そして彼に続く無数の人間をジハードへといざなう「道標(ファターク)」を彼の遺書から紐解く物語。1966年頃。
『ウサマ・ビン・ラディン・フットボールクラブ』
サイイド・クトゥブより子供の名前を授かったムハンマド・ビン・ラディンは九男にウサマ(獅子)と名付けた。それより30年後。ジハードを誓うウサマはスーダンで不遇の日を過ごしていた。彼は誰よりもフットボールを愛した。健全なる身体が聖なるジハードに必ず必要だと確信していたからだ。
女たちの祈り
『六月の長い夜』
エジプト、カイロ。1970年6月に始まった第三次中東戦争(アラブ側では六月戦争)は対してエジプト、シリア、ヨルダンの36万の大軍は最新鋭の武装に身を包んだわずか5万の軍隊に壊滅的に蹴散らされた。そして、聖地エルサレムが奪還される、その夜。敬虔なごく普通のイスラム教徒の夫婦の家で。イスラーム版『ゴドーを待ちながら』。
『兄はイスラム原理主義者になった』
イングランドの港町ポーツマス。長年引きこもりだった兄、ジェームスがロンドンに出かけるようになった。家族はジェームスにとってよい傾向だと喜んでいたが、やがて彼が過激なイスラム原理主義者になっていることに気づく。なんとかして家族は彼をキリスト教に戻そうとするが…
——今ここに宣言しなさいよ。「僕はシリアに行って心底幸せだ」
『兄はイスラム原理主義者になった』イスラム原理主義者になった兄ジェームスに投げかけた、エマ・ダートの言葉。
——想像するのよ。あなたの人生で一番美しい場所で、想像もつかないような素敵なことが起こるわ。なにが起こる?
『六月の長い夜』妻ノーラは夫に想像を促して。
——俺はアフガニスタンで勇敢に戦った。だけど、それが宗教的情熱であったと誰が断定できるんだ。
『ウサマ・ビンラディン・フットボールクラブ』フセインがユセフに詰め寄って。
——これは記録してはならぬ。書き残してはならぬ。私はその子の名前のために語るのだ。すべてはその名前に、その名前のみ記されればよい。
『殉教者』サイイド・クトゥブの陳述。
『殉教者』 | ||||
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サイイド・クトゥブ | … | 作家・思想家 | … | 大原研二(DULL-COLORED POP) |
『ウサマ・ビン・ラディン・フットボールクラブ』 | ||||
ウサマ | … | ウサマ・ビン・ラディン | … | 浅倉洋介 |
ユセフ | … | サッカー選手 | … | 津田修平 |
フセイン | … | サッカー選手 | … | 安田徳(蜂寅企画) |
マンスール | … | サッカー選手 | … | 田中恵久 |
ナシル | … | サッカー選手 | … | 川﨑雄太郎 |
『六月の長い夜』 | ||||
サイード | … | 夫 | … | 浜野貴之(下井草演劇研究舎) |
ノーラ | … | 妻 | … | 東澤有香 |
少年 | … | 夫婦のもとを訪れる謎の少年 | … | 黒澤多生 |
『兄はイスラム原理主義者になった』 | ||||
エマ | … | テレビディレクター | … | 前園あかり |
ジェームス | … | エマの兄 | … | 山崎丸光(HYP39Div.) |
ソフィ | … | エマ、ジェームス、ケイトの母 | … | 中山有子 |
ケイト | … | エマの妹 | … | 土佐まりな |
アフマド | … | 改宗したてのムスリム | … | 黒澤多生 |
ロジャー | … | ケイトの彼氏 | … | 浅倉洋介 |
脚本・演出:南慎介(Ammo/MinamiProduce)
舞台監督:⾼⼭和也(THEBIGFOOTSTAGE)
⾳響効果:北島とわ ⾳響オペ:⼤⽮紗瑛
照明:阿部将之(LICHT-ER)ドラマターグ:⽥中圭介
制作:芝居屋⾵雷紡 ⾐装協⼒:ミナモザ
デザイン:milieudesign web管理:堀⼝節⼦ イラストレーション:桐村理恵
記録映像:川本啓 記録写真:C’s naoki
飲食店の軒先のハラールのマーク。中華の赤い吊り飾り。ショッピングモールのムスリム向けの礼拝所。洗礼名の書かれた名刺。聖書。賛美歌。タイ仏教のオレンジ色の袈裟。
ひどく強情だった私たちの都市も、文化の輪郭が曖昧になってきている。どの大都市も多文化主義を受け入れざるを得なくなり、「私たちのまち東京」が「世界の東京」に変わる中、隣人の大家族について私たちはあまりにも無知である。
【イスラーム】。どの宗教よりも知的で隣人と平和を愛し、そして過剰な情熱と閉鎖性、征服の歴史を持つ世界三大宗教とその宗教世界。私たちと同じような日常を過ごし、そして何かが決定的にずれている。本作品は少人数での会話を中心とした短編集となる。登場人物は国籍も年齢も性別も宗教も様々だが、どの人物も深くイスラームの教えに帰依しており、社会との関わりに深く悩んでいる。
その強い宗教性ゆえに閉鎖されている社会が都市と出会うことで語りうるものがある。【僕たちは他人の祈りについてどれだけ誠実でいられるか】。そのために、イスラームを象徴するいくつかの事件を抜き出し、短編にしてみた。これが恐らく今後他者を理解する伴になるはずだ。
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