
脚本・演出:南慎介
2018年11月22日~25日
@SOOO dramatic!

A(Alt-order)編
『彼のカルト』
「来週から一人講師の先生が増えるから」
履修も全て終わったこの時期に急に教授の曹から告げられて、文学部「サロン」の管理者である事務員のひかりは驚いた。
「彼」が世間にとってあまりに特別な存在であったからだ。
「彼」の父は大都市に化学兵器をばら撒き、死者13人負傷者6000人を出した同時多発テロを起こした、新興宗教の教祖である。
それから20年。バラバラに収監されていた彼の肉親と、幼少期を一緒に過ごした元「家族」が一箇所に集められた。報道に「元幹部一斉に死刑か」の文字が躍ったとき、新聞を読む彼の手がよく見えなければ気付かないくらい、しかし確かに震えていた。
『燈』
思想矯正所に閉じ込められている二人の男。刑務官は二人の男それぞれに取引を持ちかける。
「このままだとお前たち二人は懲役10年だ。もし、お前たち両方が黙秘したら証拠不十分として懲役を5年にしよう。しかし、もし片方だけが裏切って自白し、もう片方が自白しなかった場合、自白したほうをただちに釈放し、自白しなかった方は懲役15年となる」
独房。それぞれ別に閉じ込められた男たち。有名な思考的実験から始まる、政治犯への哲学矯正。
N(Next to me)編
『私のイスラム』
中堅商社に勤める一般職のわたし(みすず)はイスラム教徒に改宗することを決意しました。日本では数少ないムスリム(イスラム教徒)になるには周りの理解が必要のため、友人や彼氏に理解を求める毎日が続きます。会社にはイランの支社から同世代のムスリム、ナスリンが異動してきます。
ところがその時、フランス帰りでフランスかぶれの上司、通称ムッシュが現れます。ムッシュはフランスのライシテと呼ばれる「政教分離」の原則を振りかざし、ムスリムであるわたしとナスリンに嫌がらせをしてきます。
生まれたてのムスリムであるわたしは、自らの信仰を守るためにジハードを模索することになるのですが・・
『兄は原理主義者になった』
イングランドの港町ポーツマス。長年引きこもりだった兄、ジェームスがロンドンに出かけるようになった。家族はジェームスにとってよい傾向だと喜んでいたが、やがて彼が過激なイスラム原理主義者になっていることに気づく。なんとかして家族は彼をキリスト教に戻そうとするが・・
——あなたはわからないのです。普通に暮らしていても、奪われるだけの人生を。想像したことがありますか、ただここで生きているだけなのに自分が多くの意味を持ち、体や心、言葉を奪われる実感を。
『彼のカルト』カルト宗教の元教祖の息子、波多野は「サロン」を去る前に。
——人間は死を前にすると真実から目を逸らすことができないと言う。その人生に対する思考、人生を貫いた、そう・・歴史!歴史の中に自らを置こうとするその高潔な態度がお前の本質なんだ。
『燈』囚人番号9は逃亡のジャングルの中で、相棒に。
——ハムドリッラー。みすずに会うことが出来ました。
『私のイスラム』イランと日本のダブル、ナスリンは改宗したばかりの日本の同胞に。
『彼のカルト』 | ||||
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波多野 | … | カルト宗教の教祖の息子 | … | 津田修平(Ammo) |
ひかり | … | 正華大学文学部の事務員 | … | 前園あかり(Ammo) |
栗原 | … | ジャーナリスト | … | 吉村公佑(劇団B級遊撃隊) |
三井 | … | 映像作家 | … | 霧島ロック(ここかしこの風) |
村川 | … | 元信者 | … | 石井舞 |
曹 | … | 社会学の教授 | … | 川本喬介(はらぺこペンギン!) |
相原 | … | 大学生 | … | 菅山望 |
羊 | … | 子役上がりの俳優 | … | レベッカ |
『燈』 | ||||
番号9 | … | 思想犯。元政治活動家 | … | 山崎丸光 |
番号13 | … | 思想犯。元医師 | … | 坂井宏充(演劇ユニットハイブリッド) |
刑務官 | … | 思想矯正所の政治犯担当係 | … | 津田修平(Ammo) |
『わたしのイスラム』 | ||||
わたし | … | イスラムに改宗する女 | … | 豊田可奈子 |
陽一 | … | わたしの彼氏 | … | 西嶋友哉 |
友達1 | … | わたしの同僚 | … | 前園あかり(Ammo) |
友達2 | … | わたしの同僚 | … | 石井舞 |
ムッシュ | … | フランス帰りの上司 | … | 霧島ロック(ここかしこの風) |
ナスリン | … | 新しく会社に入ったイラン人 | … | 井上実莉(劇団SHOW) |
脇坂 | … | モスクのイマーム(指導者) | … | 川本喬介(はらぺこペンギン!) |
『兄は原理主義者になった』 | ||||
エマ | … | テレビディレクター | … | 前園あかり(Ammo) |
ジェームス | … | エマの兄。サラフィー主義者 | … | 伊澤玲(★☆北区AKT STAGE) |
ソフィ | … | エマ、ジェームス、ケイトの母 | … | 川﨑初夏(TRASHMASTERS) |
ケイト | … | エマの妹 | … | レベッカ |
アフマド | … | 改宗したてのムスリム | … | 津田修平(Ammo) |
ロジャー | … | ケイトの彼氏 | … | 西嶋友哉 |
脚本・演出:南慎介(Ammo) 舞台監督:長谷川雅也(舞台製作団体BMG)
音響オペレーション:保阪藍(劇団 演劇らぼ・狼たちの教室)
演出助手:双葉 デザイン:南裕子(milieu design) イラスト:桐村理恵
web管理:堀口節子 当日制作:福澤くるみ(劇団AceAndJorker)
記録映像:川本啓 記録写真:C’s naoki
時代考証や精密な取材を重ね、海外のテーマを描いてきたAmmoの、「できるだけシンプルな衣装で、小道具で、舞台美術や音響照明も最低限で、純粋に戯曲を味わっていただく」公演です。
二つのプログラムで、それぞれリーディング1本と中編公演1本を上演いたします。Aヴァージョンでは【Alt-order】編として、カルト宗教の後継として生まれた青年との交流を描く、リーディング「彼のカルト」と、クメール・ルージュ支配下の思想矯正所の囚人と刑務官の中編「燈」。
Nヴァージョンでは【Next to me】編として、東京に住むごく普通の会社員がイスラム教に改宗するリーディング「私のイスラム」、引きこもりであった兄とテレビ・ディレクターとの対話を描く「兄は原理主義者になった」を上演します。
物理的に、あるいは心理的に遠い場所からあなたに言葉が届きますように。これは祈りだ。
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