脚本・演出:南慎介
2019年2月14日~19日
@シアター風姿花伝
アフタートーク
2/15 中村ノブアキ氏(JACROW主宰)

「衣食住は足りた。あとは、人が人として生きるために何が必要だ?」
1951年、パリ。国際大学都市(シテ・ユニヴェルシテール)に通うフランス領インドシナ(現カンボジア)の学生たちは、15区ルトリエ通りにある貸しアパルトマンに集まっていた。新入生歓迎のための催し物を相談するためだ。そのうち、誰かが演劇を上演することを提案し、賛否両論で議論が進む中、一人の落第気味の技術学生が喧騒から距離を置き、壁にもたれかかっていた。
彼の名前はサロト・サル。明るく、スポーツ万能でしかし特徴のない、品の良い仕草と笑顔を絶やさない目立たない男。彼は後に革命組織クメール・ルージュの指導者となり、ポル・ポトと名乗る。
クメール・ルージュ…かつて存在した共産主義革命組織。後に国家「民主カンプチア(現カンボジア)」を設立後、反都市・反貨幣経済・反知識人と徹底した西洋否定主義を取り、反対する、あるいは「反対するかもしれない」国民の5分の1に当たる200万人を虐殺したと言われている。
——だけど、私は、私個人の気持ちだけで言えば、「見ていた」の。ただ、自動的に、流れていくのを、ただ。
虐殺に加担したとされる、カンボジア元教育相イム・ソテア は彼女の弁護士に告げて。
——いいよ、お前がどんな立場でもいい。でもな、公平な態度を保つというのは、何かを狂信的に信じるよりよっぽど難しいことなんだ。考えることをやめるというのは、とても簡単なことなんだ。
留学生のリーダーの一人、ラト・サムーンの言葉。
——俺たちにも文化があることを、俺たちは誇り高きカンボジアの人間だということを知らしめる絶好の機会じゃないか。俺たちが。
後の副首相イエン・サリは、留学先のパリで演説をする。
()内は劇中の「リア王」の配役
イム・ソテア(オルバニー公) | … | 学生。のちのクメール・ルージュの生き証人となる | … | 前園あかり(Ammo) |
サロト・サル(演出) | … | 学生。目立たない存在 | … | 津田修平(Ammo) |
イエン・サリ(ケント伯) | … | 学生たちの中でも目立つ存在。サルの盟友 | … | 谷恭輔(KAKUTA) |
ケン・バンサク(リア王) | … | 学生たちの中でも目立つ存在。フランス共産党の心棒者 | … | 吉村公佑(劇団B級遊撃隊) |
ラト・サムーン(エドガー) | … | 学生たちのリーダー | … | 日下部そう |
ソン・セン(エドマンド) | … | 学生。行動力があり頼られる存在 | … | 菊池祐太(ゲキバカ) |
トゥチ・ユオン(道化) | … | 学生。農村部出身 | … | 足立英 |
フー・ニム(コーンウォール伯) | … | 学生。貧しい家の生まれ | … | 浅井慎ノ介 |
クワン・シパン(グロスター) | … | 学生たちのお目付け役 | … | 大原研二(DULL-COLORED POP) |
キュー・ポナリー(リーガン) | … | カンボジアで女性初の学位を取った才女 | … | 石井舞 |
イエン・チリト(コーディリア) | … | 学生結婚をしたサリの妻 | … | 福永理未 |
タット・ヤサ(衣装) | … | 学生。手先が器用で真面目 | … | 加順遥 |
ナタリー・ブランシャール(ゴネリル) | … | ルトリエ通りの空き家の管理人 | … | もなみのりこ |
弁護士 | … | ソテアの担当弁護士 | … | 大原研二(DULL-COLORED POP) |
脚本・演出:南慎介(Ammo) 舞台監督:吉倉優喜
舞台美術:谷佳那香 照明:阿部将之(LICHT-ER) 音響効果:松田幹
演出助手:坂倉球水、崎濱祥子、岡村梨加(ヨハクノート)
衣装:金田かお里(undaily gate) ドラマターグ:田中圭介
記録映像:川本啓 記録写真:C’s naoki 制作:間宮知子(風ノ環~かぜのわ~)
デザイン:南裕子(milieu design) web管理:堀口節子
1950年代。パリは沸騰していた。東南アジアでは共産党に導かれた抵抗運動がフランス植民地支配と勇敢に戦い、中国では共産党が勝利を収め、朝鮮戦争では共産軍と反共産軍が戦った。
1世紀近くも文学・芸術・哲学・音楽など様々な知の集積地として輝いていた「光の都」パリの南部、国際大学都市(シテ・ユニヴェルシテール)に通うフランス領インドシナ(現カンボジア)の学生たちは、来るべき共産主義革命と祖国の独立に想いを馳せていた。
彼らクメール人は苦悩していた。世界最大の宗教建築を成し得たアンコール朝の偉大な王たちに比べ、フランスの植民地で西洋人の靴をなめている自分たちはなんと情けないことであろうか。しかし、西洋はあまりに強大で彼らは悟る。
「西洋の背中を追っていたとしても、100年経ってもカンボジアは追いつけない。それでは、私たちは……」
後にこの数十人の留学生は共産党革命組織「クメール・ルージュ」の幹部となり、国民の5分の1を虐殺するに至る。
人間はいかにして「自分の空っぽの部分を原理主義」で埋めるか。
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