Ammo vol.7『調和と服毒』

脚本・演出:南慎介

2019年10月17日~22日
@上野ストアハウス

アフタートーク

10/18 高木登氏(演劇ユニット鵺的主宰)

「いますぐ、あの絵を描くのをやめさせたらよろしい。あれは、悪魔のように美しい」

 ルネサンスを代表する巨匠、古典主義の最大の画家、新プラトン主義の美術界における最大の守護者、ラファエロ・サンティは教皇の居室を装飾するという名誉ある仕事を承った。
 しかしながら、広大な内装の全てをラファエロ一人で描くことは難しく、彼の弟子がその一部を請け負ってフレスコ画を描いていた。多くの名画が彼の忠実なる弟子によって描かれる中、3つ目の部屋、最も地味な場所に描かれた一人の弟子の作品が工房の中で大きな議論となっていた。

 「美しすぎる」

 後にラファエロの工房から独立する高名な弟子の一人が言った。「あれは美しい。しかし悪魔のように。この神聖なる場所にふさわしくない」
 しかし、ラファエロは考える。
「もしこれが完成すれば、ダ・ヴィンチやミケランジェロを超えられるかもしれない」

『美しい』という言葉が神に近いという言葉とイコールであった時代。神を超える作品を描こうとした一人の男装画家とルネサンスの最後の光について。

——これから我々は、以前と同様に神に近いものを美しいと思うのでしょう。そして、同じように自らの物語に沿って、人間それぞれが全く別のものを、神とは違って美しいと感じるようになる。

男装の画家・ジュリオがパラゴーネの中に見出した光。

——猊下。どうぞ、お待ちください。パラゴーネです。我らラファエロ工房をラファエロ工房たりえるものにするのはひとつ、パラゴーネのみです。今から我々は答えを出します。「この作品に美はあるか?」

マエストロ・ラファエロは父にも等しい枢機卿を前に宣言する。

——お前が近いうちに親方になる。そうしたらどうだ、全部の色をお手本のまま創るか?・・・・・・違うな。お前だけの独創的な色を求めるはずだ。・・・そうしたら、空を何色で描く?

ラファエロ工房の弟子・カルロは自分の理想の絵を追い求めて。

ラファエロルネサンス期を代表する芸術家西川康太郎(ゲキバカ/おしゃれ紳士)
ジュリオラファエロの弟子。男装の芸術家前園あかり(Ammo)
フランチェスコマエストロ。工房長高木健(エンニュイ)
トンマーゾマエストロ。貴族出身日下部そう
タッデオマエストロ。ラファエロの一番弟子辻井彰太
アンナ・マリアラファエロの弟子。貴族女流画家中野智恵梨
ロレンツォラファエロの弟子。新人港谷順(Ayuka project)
ポリドーロラファエロの弟子。元資材運搬人森田匠(TRASHMASTERS)
カルロラファエロの弟子。商人出身杉林健生(俳優座)
ステファノラファエロの弟子。解放奴隷津田修平(Ammo)
マルカントーニオ共同制作者。版画家吉村公佑(劇団B級遊撃隊)
パオラ工房の小間使い少女井上実莉(Ammo)
フリートラファエロの愛人今駒ちひろ
ビビエーノ枢機卿。ラファエロのパトロン大原研二(DULL-COLORED POP)

脚本・演出:南慎介(Ammo) 
舞台監督:本郷剛史/武田佐京 舞台美術:谷佳那香 照明:阿部将之(LICHT-ER)
音響効果:松田幹 演出助手:緒方優紀乃/白野熊子/森田諒一 
衣装:金田かお里(undaily gate) ドラマターグ:田中圭介 
記録映像:川本啓 記録写真・web管理:C’s naoki  制作:吉田千尋(LUCKUP) 
広報:岡村梨加(ヨハクノート) デザイン:南裕子(milieu design)

 ルネサンスを代表する巨匠、古典主義の最大の画家、新プラトン主義の美術界における最大の守護者、ラファエロ・サンティ。その姿はミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチという複雑なる知性の大いなる影に時に隠れがちです。ですが彼は、当時最大の工房を運営している経営者でもあり、他の巨匠が建築をはじめとして天文学や音楽、物理学までにその手を広げたのと対照的に、ただ「美」にのみ生きた人でした。

 『調和と服毒』は「美」という言葉が神への距離と等しかった時代。彼の工房で繰り広げられる「美しすぎる絵を描いてしまった人」を巡って繰り広げられる議論劇です。
 「最も聖なる場所に悪魔的に美しいものを描く」

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